(flyer design 岡田将充/ OMD)

 

英ゆう個展

「作庭ひらく」

solo exhibition "SAKUTEI HIRAKU"

2021年2月13日ー2月27日

13th - 27th Feb, 2021

Kyoto Art Center

 

作庭ひらく

創意をもって自然を扱い、和室をひらく庭を作り出す試みです。
英ゆうは長きに渡りタイと京都を行き来して美術活動を行ってきており、人の美意識を通して作りあげられる自然のかたちをモチーフに描いてきた。近年は絵画作品によって室内に外(庭)空間を作る「作庭」という展示発表を繰り返し、室内にどんな風景も作り出せる窓、又は扉としての絵画のポテンシャルを探っている。会期中には 庭師で茶人の植彦(甘雨庵)さんをお招きして明倫茶会を開催する。展示により作庭した場を軸に、それぞれが思う処に座してオンラインで(自服による茶会の)時間と体験を共有する。

「ひらく」とは築く、閉じていたものが広がる、花が開くというような意味を持つ。人のイマジネーションの広がりが意識の繋がりを生み出していくことをあらわしている。
物質的に満足度の高い現代において、これから目指すより良い社会とは如何なるものなのか、そんなことを考えるとき、私個人としては物質的空間以外の次元にひらいていく必然性を感じざるを得ない。
美術作品は希望を表現するものだという信念を持って、これまで私は人と自然が豊かに調和する光景を描くことを核に絵を描いてきた。タイでの長いリサーチや滞在制作を通して日本人の自然観を見直し、人の美意識を通して作りあげられる自然の姿として、タイの供花や日本の庭をモチーフにしてきている。庭はまさに日本人の知識と美意識の宝庫であり、個人的な創意を盛り込んでいくこともできるオールマイティな場であり、必ずしも実体がなくてはならないわけでもなく、非常に抽象的に定義することもできるが、そこには必ず場という意識と人の創意がある。いかにして絵画で庭を作り出すか、という試みの一つを今回また和室明倫でさせていただくことになり、心から深く感謝している。
2010年にタイでの滞在制作から帰国後、京都芸術センターの大広間の空間をバンコクの王宮前広場に見立てた「外を入れる」という展示を行い、2013年には和室明倫で「外を入れる vol.2 」と題して室内に日本庭園を思わせる空間を作り、茶室(和室明倫)で「野点」を行なった。
その後も室内に外(庭)空間を作る作庭というコンセプトで展示発表を繰り返す中で、室内にいながらどんな風景も作り出せる窓、又は扉としての絵画のポテンシャルを探っている。近年は植木だけを描いた絵画作品を置く事で室内空間に庭を作るという展開もしており、それを染料プリントで布に移すことによって、より柔軟に扱える可能性を感じており、今回初めてそうした作品も展示する。
現在はコロナ禍により、思いがけずリモートでの交流がスピード感を持って世間に浸透した。その状況下で、物質を介さない空間内での交感が可能であることを実感させられた。私たちは物理を超えてどこへでも行ける。という思いを持って参加者それぞれが選んだ処に座していただき、展示により作庭した場を軸にオンライン茶会を開催したい。
茶会は庭師で茶人の植彦(甘雨庵)さんに導いていただき、参加される方々には事前にキットを配送してオンラインで(自服による茶会の)時間と体験を共有する。
展覧会では庭をかたちづくる屏風作品や染料プリントによる絵画と、絵画の最も古い役割である「祈り」の媒体としての体験型作品を出品する。その扉を通して異次元への意識を、或いは届けたい思いをひらき起こしてほしい。

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

植込み2021

 

150 x 240cm x 3pieces

2021

prints on fabric

 

元々は油彩画の作品写真を加工して透けるカーテン生地に染料インクを熱転写しています。

そこにあるような無いような、不確かな存在感を表します。

 

 

 

 

「嵐のあとの庭で 子を導こうとする母親の歩みと生命の循環の煌めき、

または様々な次元の交感が巡るところ」

162 x 452 cm

2021

water color on canvas

ガッシュや顔彩などの水彩絵の具で麻のキャンバスに描いています。

     

 

 

植込み灯篭

2021

print on fabric

 

 

                 

 

祈り

prayer

2021

water color, mixed media on paper

ラオスの手漉き紙(竹)を裏打ちしたもの

 

昨年よりコロナ禍の影響で人と会うことが制限される生活が続いています。その中で室内に庭園を作り、オンラインのお茶会をひらくことで参加者の中にある庭のイメージをリンクし、新たな繋がり方をひらいていく、というような考えで全ての展示とお茶会を構成しています。ひらくとは、拓く、開く、という表現もあり、目の前にある物質を介さずとも繋がれる次元へと人の社会がひらいていくことに希望を見出しています。この「祈り」の作品は小仏の上に一輪一輪花を描き、タイで神聖なものに掛ける花環を形取りました。それを床の間に重ねて配置することで、異次元への扉をひらきます。明倫茶会に参加される方にはそれぞれ金箔を一枚お渡ししているので、それを改めて会場にお越しいただいて、また、全員と直接出会うことなく同じところに金箔と一緒に痕跡を残し、思いを重ねていただくという行為を持って実感を深めていただくという仕組みになっています

 

     

 

(実際に参加される方へ送った手紙)

お茶会にご参加いただきます皆様へ

この度は明倫茶会「帰家穏坐」にご参加いただきましてありがとうございます。

今回のお茶会に合わせて開催する展示「作庭ひらく」は室内に庭空間を作り出すという2010年頃から始めた私の「作庭」のコンセプトの延長線上にありますが、それを「ひらく」としたのはここで作る空間が世界中のどこまでも繋がるという意味を込めています。

私個人のことですが、この1、2年の間に今生きているこの次元以外の異次元と繋がっていることを感じられるような出来事に遭遇しました。それと同時期にコロナという災いを通して全世界で人と人とが物理的に会わなくても繋がり合える環境へと一気に移行したことも偶然ではないと考えています。
そんな中、オンラインでお茶会をひらくということは私にとってもお点前を引き受けてくださった植彦さんにとっても非常に前向きな、そして興味深い試みであり、これからの時代の繋がり方を体感できる機会であると思っております。

私は長くタイでも制作をしてきました。そこでは人々はお寺で仏像や仏舎利に小さな金箔を貼ってお参りします。少々恐れ多いのですが、その手法を借りて、金箔を一片ずつ同封しますので、可能でしたら展覧会期間中(2月13日ー27日)に会場へその金箔を持ってきていただいて、床の間に展示している大きな紙の作品に貼っていただきたいと思っています。

それは今回のオンライン上での時間の共有とは別の形で、同じ会場で時間をずらして一つの場所に思いを寄せることでできる繋がりを生み出します。私はそうした意思や思いをはせて生まれるコミュニケーションに未来を感じています。

床の間は異次元に繋がる扉であると考えています。そこに掛けた絵には祈りの意味を込めて花を重ねた花環を描きました。皆さんの思いを花環の扉を通して届けていただけましたら幸いです。

会場で係の方に一言お声がけください。お茶会の最後にも実際の貼り方を説明させていただきますので、よろしくお願い致します。

 

 

最終形
           

      

   

    

 

第152回明倫茶会「帰家穏坐」の

お点前をしていただきました甘雨庵さんによる松竹梅の植込み。

玄関の竹林を通って甘雨庵さん甘の庭を眺めながら奥の「作庭」空間に入っていきます。

 

  

 

 

 

photo by 八杉 和興 Kazuoki Yasugi